「旅の指さし会話帳フィリピン」の著者白野慎也が追う渾身のノンフィクション
フィリピン人エンターテイナーの入国が、厳しく抑えられるようになって1年余り。
全国のフィリピンパブが、どんどん消えつつある。
歌に、踊りに、ショーに、つかの間の癒しを与えてくれた天使たちは今どこで、何をしているのだろうか? 
「旅の指さし会話帳フィリピン」の著者・白野慎也が、フィリピーナの“その後の人生”を追いかける、衝撃のレポート。
外出する交通費もない生活
〔前回まで〕
著者はマカティの高級カラオケクラブで知り合ったローナ(23歳)に話を聞くことに成功します。一児の母でもある彼女は、1日わずか30ペソ程度しか使えず一食しか食べないことも多いと明かします。

     *    *

 やっぱりそんな感じか、と思いながら、僕は淡々と話す彼女の話を聞いていた。米1キロが20~30ペソ、サンミゲル1本が28ペソ。定食屋の割安セットメニューでも30ペソ以下の店は少ない。30ペソでは健康な人なら一食でも腹一杯食べることは無理だ。それに23歳の女性と言えば、おしゃれやレジャーなど、自分のためにもお金をかけたいに違いない。
 しかしローナは、半年以上新しい服は買ってないし、化粧も最低限。交通費がかかるからと言って外出もしない。日曜日に子供と過ごすことだけが生きがいだと言う。家族を養うためだけにすべての時間とお金を費やす。それでも子供の病気など緊急時には田舎から仕送りしてもらうこともある。
 「家族のために仕事してるのに、逆に仕送りしてもらうなんて本当に情けないわ」
 僕は、家族のための100%の自己犠牲を当たり前のように受け止め、ひたすら自分を捨てて生きる彼女のけなげな姿に感動し、心ならずも家族を助けられない状況に追い込まれてしまった今の自分を責めている彼女が不憫でならなかった。彼女にはタイマー(日本行きのベテラン)特有のスレやある種の倦怠感がない。お客を巧みにスポンサーに仕立てる技もない。真っ正直で不器用な万年新人タレントのように見えた。
 ワンセット90分、1300ペソ。VIPルームがいくつもある豪華なカラオケ店でお姫様のようなドレスに身を包み、洗練された身のこなしで日本人客にいやしと憩いを提供し続ける来日待ちのシンデレラの実生活は、予想をはるかに超えて極めて過酷なものだった。

★運命のオーディション
 ローナは1982年の8月、フィリピン中南部の中部ビサヤ地方のボホール島で生まれた。5人兄弟の3番目で、15歳の時お姉さんが仕事でダバオに行くのに同行した。父親には定職がなく、お姉さんだけが家計の担い手だった。家は1日1食しかできない極貧の生活で、ベニヤで作った四角い箱にトタン屋根を乗せただけの家を借りて住んでいた。
 彼女の日本行きの動機も、こうした貧困からの脱出、親兄弟の経済的支援である。しかし、日本に行きたくとも身のまわりに日本に行ったことのある人はいない。どうしようかと思っていた矢先、地元ダバオで日本のプロモーションがオーディションをやるといううわさを聞きつけて、迷わず応募した。まさに『渡りに船』だった。

 オーディション会場に着いた彼女はすごく萎縮したと言う。200人もの応募者が殺到。かわいくてスタイルのいいコがたくさんいる…(以降は次回に)
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by webmag-c | 2006-08-28 12:59 | ローナ2 不器用な万年新人