「旅の指さし会話帳フィリピン」の著者白野慎也が追う渾身のノンフィクション
フィリピン人エンターテイナーの入国が、厳しく抑えられるようになって1年余り。
全国のフィリピンパブが、どんどん消えつつある。
歌に、踊りに、ショーに、つかの間の癒しを与えてくれた天使たちは今どこで、何をしているのだろうか? 
「旅の指さし会話帳フィリピン」の著者・白野慎也が、フィリピーナの“その後の人生”を追いかける、衝撃のレポート。
スポンサーと恋人(シエラ第6回)
 それにしても彼女の微妙なさじ加減には恐れ入る。しかし、『うそにはうそ』ということで、彼女は日本人の恋人を演じ、彼の望む通り日本レストランで働き、言うことを聞いているような顔をして毎月の援助を引き出し、その一方でフィリピン人の彼氏を作り、そのことは日本人の彼氏には内緒にしている。彼女もなかなかしたたか者だ。自分を傷つけた彼はスポンサーに降格という論法も妙に僕は納得してしまった。
 それにしてもまたしても日本人スポンサーか? いったい何千人、いや何万人の日本人がフィリピン人女性に個人的ODAを実施しているのだろうか? やはりスポンサーのいる元エンターテイナーはゆとりが違う。シエラにしても、本人がまともに働いて稼いでいる月給の4倍もの大金を毎月送ってきてくれるのだから。シエラの余裕も結局、日本人の彼(いや降格されてスポンサーと言うべきか)からの仕送りに支えられたものだったのだ。
 日本人の彼も、よくもまあシエラのために大金をつぎ込んでいるものだと思う。彼女の来日中のパブへの支払い。月5万円、7年間という直接経済支援。積立預金でもしていたらちょっとした額になる。利子を考えなくても日本円で420万円。マニラなら豪華マンション1世帯分が購入でき、地方なら家が2~3軒は建ってしまう金額だ。それに加えて1年に3回は渡比して、その時は普通の恋人のように濃密に愛し合うと言う。当然その時はおこづかいをおいていくことも忘れない。
「彼は7年間も私をだましていたんだから、私が彼に内緒でフィリピン人の恋人を作って彼をスポンサーに格下げするくらい当たり前でしょう。クーヤはどう思う?」
「いや、まったく君の言うとおりだよ」
 僕は急なシエラの問いに、心にもないことを言って同調してしまった。本当はどっちもどっちだな、思っていたのだが、インタビューをスムーズに進めるには彼女の機嫌を損ねない方が得策だと思ったからだ。
 気の毒なのは、だしに使われているとしか思えないフィリピン人の彼だ。シエラに恋人として認められてから1ヶ月だという彼は、まだ日本人の彼とは面識はない。日本人の彼が今度来比した時には、シエラのいとことか弟とでも紹介され、行動を共にさせられるのだろうか?
「クーヤ、よくわかってるじゃない。そうするつもりよ」
 僕が冗談でシエラに鎌をかけてみたらこともなげに彼女は言い放った。これもシエラなりの復讐の一部に違いなかった。いとこ、兄弟として紹介された人物が実は恋人だったり、旦那だったりというのはフィリピンではよくある話。僕は改めて怖いなと思った。
 シエラはフィリピン人の彼氏にはどこかで埋め合わせするのだろうが、いつどうやってするのか、興味はあったが本人を隣にしてそこまで聞くことはできなかった。
(つづきは次回に)
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by webmag-c | 2006-10-10 15:49 | シエラ6 スポンサーと恋人