「旅の指さし会話帳フィリピン」の著者白野慎也が追う渾身のノンフィクション
フィリピン人エンターテイナーの入国が、厳しく抑えられるようになって1年余り。
全国のフィリピンパブが、どんどん消えつつある。
歌に、踊りに、ショーに、つかの間の癒しを与えてくれた天使たちは今どこで、何をしているのだろうか? 
「旅の指さし会話帳フィリピン」の著者・白野慎也が、フィリピーナの“その後の人生”を追いかける、衝撃のレポート。
カテゴリ:シエラ4 金持ちになる皮算用( 1 )
金持ちになる皮算用(シエラ第4回)
 マニラの日本レストランでウェイトレスとして働くシエラ。「遠くに行く時には自家用ヘリもほしい」というほどの大金持ちになることを望む彼女が、金儲けのプランを語ります。

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★失敗また失敗のファミリービジネス
 それだけ壮大な夢を実現するためにはとてつもない大金が必要だ。大金を生み出すためにシエラとそのパートナーのお父さんが手がけてきたファミリービジネスの足跡をざっと見てみよう。
「今まで一度も利益が出たことがないの」
 シエラは自分たちのファミリービジネスをまずきわめてわかりやすく総括してくれた。
お金の勘定や算数は苦手という彼女が、事業意欲だけは満々のお父さんと取り組んできたファミリービジネスはまず、2002年に20万ペソを投じて始めたサリサリストア(雑貨店)だった。繁盛してはいたものの、ご近所さんからの付け払いの依頼を断りきれず、代金の未回収が多すぎて一年で閉店。
 2003年には、地元の海沿いに30万ペソを投じてミニリゾート開発に着手して海辺にコテージが何棟か完成した直後、台風による大雨が原因の地すべりにあってリゾートはあっけなく泥に飲み込まれてしまう。
 2004年には乗客用三輪バイクであるトライシクルのメンテナンスショップ、KTVと呼ばれるカラオケレストランの経営、乗客用バン3台の貸し出しといろいろと仕掛けるが、すべて損ばかり。現在残っているのは、貸し出し用のバン1台だけだと言う。
これは絶対、計画がおかしいか、シエラとお父さんの性格が商売に向いていないと思わざるを得ない。
 一番最初に手がけたサリサリの場合、付け払いは極力許さず、少々シビアに取り立てるといった、ある程度の非情さが必要だ。ただ、非情になりすぎると近所づきあいがギクシャクしてくるので、そのさじ加減が難しい。それで失敗してしまったと言うのはまだ納得できる。ただそれ以外のビジネスは、投資と利益計算をほとんどまったくしていないのではないかとしか考えようがなかった。僕のような素人でもわかりやすいところを聞いてみた。
「バンはいくらで買って、1日いくらで貸してるの?」
「正確にはわからないけど、多分中古を50万ペソくらいで買って……1日いくらで貸しているかは……そう言えば今はわからないわ。お父さんがみんなわかってるはずだけど」
 何のことはない。投資額も粗利益もシエラは何も把握していない。どんぶり勘定のお父さんの道楽商売に漠然と夢を託しているだけなのではないか、と僕は思った。
「今まではいつでも最後は損ばっかりで……」
 そう語るシエラの表情はとても楽しそうで、最後は成功することを心から信じているようでもあった。それが何の根拠もないフィリピン人特有の楽観主義であったとしても。シエラは大金持ちになる夢を見て努力を続ける過程に喜びを見出しているようで、利益が出るかでないかは実はそんなに重要でないようにも思えた。
(つづきは次回に)
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by webmag-c | 2006-10-07 18:57 | シエラ4 金持ちになる皮算用